なぜLEVEL7は、鏡面だけでなく“サテン仕上げ”にこだわるのか

腕時計のケース仕上げというと、多くの方が最初に思い浮かべるのは、鏡のように光を反射する「鏡面仕上げ」ではないでしょうか。
磨き上げられたステンレスの美しさ。
腕を動かしたときに生まれる、華やかな輝き。

鏡面仕上げは、腕時計に高級感を与える大切な仕上げのひとつです。

LEVEL7でも、ケースの面取りやベゼル、ケースサイドなど、デザインに応じて鏡面仕上げを取り入れています。
しかし、LEVEL7がそれと同じくらい、あるいはモデルによってはそれ以上に重視しているのが「サテン仕上げ」です。

なぜ、全面をきれいに磨き上げるのではなく、あえてステンレスの表面に細かな線を残すのか。
そこには、単なる見た目の好みだけではなく、LEVEL7が腕時計をどのような道具として作っているのか、その考え方が表れています。

サテン仕上げとは何か

サテン仕上げとは、金属の表面に一定方向の細かな研磨目を入れる仕上げです。

鏡面仕上げのように周囲の景色を映し込むのではなく、光を細かく拡散させることで、落ち着いた表情を生み出します。
一般には、ヘアライン仕上げやブラッシュ仕上げと呼ばれるものも含め、研磨目の細かさや方向によって、その表情は大きく変わります。
細く繊細な研磨目を入れれば、上品で静かな印象になります。

一方、少し粗めの研磨目を残せば、金属らしい力強さや、道具としての無骨さが生まれます。
つまり、サテン仕上げは単に「光っていない仕上げ」ではありません。
研磨目の方向、粗さ、深さ、光の受け方まで含めて、腕時計の性格を作るデザインの一部です。

鏡面仕上げとサテン仕上げに、上下はない

鏡面仕上げとサテン仕上げのどちらが高級なのか。
そう聞かれることがあります。
結論からいえば、仕上げの種類だけで高級かどうかは決まりません。
鏡面だから上で、サテンだから下ということではありません。

鏡面仕上げには、下地のわずかな歪みや研磨ムラが目立ちやすい難しさがあります。
一方、サテン仕上げも、研磨目の方向や粗さが揃っていなければ、雑然とした表情になってしまいます。
特に、ケースの面ごとに線の方向を変える仕上げでは、面の境界を崩さず、均一な研磨目を入れる技術が必要です。

重要なのは、どちらの仕上げを使ったかではありません。
そのケースの形や時計の性格に対して、どの面を光らせ、どの面の反射を抑え、どこに境界を作ったのか。
仕上げの種類ではなく、その使い分けにこそ、作り手の考え方が表れます。

LEVEL7が目指すのは、1970年代の無骨さを現代の精度で作ること

LEVEL7の腕時計づくりには、1960年代から1970年代の実用時計やダイバーズウォッチから受けた影響があります。

当時の時計には、現在の高級時計とは少し違う魅力があります。

表面を華やかに飾ることよりも、視認性、耐久性、操作性といった、実用品としての役割が前に出ている。
ケースにも、金属を削り出した道具らしい力強さがあります。
サテンの研磨目も、現在の高級時計のように極端に細く、控えめなものばかりではありません。

・少し粗さを感じる表面。
・はっきりと分かる金属の目。
・光を柔らかく反射する面。

そこには、工業製品としての合理性と、その時代ならではの無骨さがありました。
ただし、LEVEL7が目指しているのは、1970年代の時計をそのまま再現することではありません。
当時の荒々しさを残しながら、現代の加工技術によって、面の形や研磨目をより均一に、よりシャープに整える。
古い時計の曖昧さを模倣するのではなく、その時代が持っていた魅力を、現代の技術で再構築する。

それが、LEVEL7のサテン仕上げの基本的な考え方です。

サテン仕上げは、ケースの「面」を見せる

鏡面仕上げは、光を強く反射します。
華やかな一方で、周囲の景色が映り込むため、見る角度によってはケースそのものの形が分かりにくくなることがあります。

サテン仕上げは、光を細かく拡散させます。
そのため、ケースに作られた平面や曲面、ラグからケースサイドへ続くラインが、比較的落ち着いて見えるようになります。

LEVEL7のケースは、単に丸い外装を作っているわけではありません。

・ケースサイドの平面。
・そこから立ち上がるエッジ。
・ラグへつながる稜線。
・面取りによって生まれる、細い光のライン。

それぞれの面がどのようにつながり、どこで切り替わるのかを考えて設計しています。
この造形を見せるためには、全面を同じように光らせるだけでは足りません。

広い面にはサテン仕上げを施して光を抑える。
その境界や面取りには鏡面を入れ、細く鋭い光を作る。
光を抑えた面と、強く反射する面。

そのコントラストによって、ケースの形がより立体的に浮かび上がります。

面取りの鏡面が生きるのは、隣にサテンがあるから

LEVEL7は、鏡面仕上げを否定しているわけではありません。
ケースの形状によっては、サテン加工に鏡面仕上げを組み込むことで、さらに存在感を増し引き締まるデザインにもなります。

それは、広いサテン面の中に細い鏡面の面取りが入ると、その部分だけが光を拾います。
腕を少し動かした瞬間、エッジに沿って一本の光が走る。

この細い光が、ケースの輪郭を強く見せます。

面取りの幅がわずかであっても、隣接するサテン面との反射の違いによって、実際の寸法以上に存在感が生まれます。
サテンは、鏡面より控えめな仕上げではありません。
鏡面を引き立て、ケースの立体感を作るための、積極的な仕上げです。

粗めのサテンは、LEVEL7の時計に無骨さを与える

LEVEL7では、モデルの性格に合わせて、少し粗めのサテン仕上げを採用しています。
細かなサテン仕上げは、繊細で上品な印象を与えます。

しかし、LEVEL7が作るダイバーズウォッチやスポーツウォッチには、もう少し力強い表情が似合うと考えています。
研磨目を完全に消してしまうのではなく、金属を削り、整えた痕跡を意匠として残す。
そこにあるのは、装飾品としての輝きだけではありません。
海や山、仕事、日常の中で使われる道具としての存在感です。

ただし、粗ければよいわけではありません。
研磨目の太さや方向が不均一であれば、それは無骨さではなく、単なる仕上げの乱れに見えてしまいます。

LEVEL7が求めているのは、1970年代の実用時計を思わせる粗さと、現代の製品に必要な均一さの両立です。

荒々しく見えて、実際には整っている。
無骨でありながら、面とエッジはシャープに立っている。

その微妙なバランスが、LEVEL7らしいケースの表情を作ります。

日常で使う時計だから、傷との付き合い方も考える

腕時計は、使えば必ず傷がつきます。
机やドア、工具、衣服の金具。
どれだけ大切に使っていても、腕につけて生活する以上、細かな擦れや傷を完全に避けることはできません。

鏡面仕上げは美しい反面、細かな傷が光の中で目立ちやすい性質があります。
サテン仕上げも傷がつかないわけではありません。
ただし、一定方向の研磨目があるため、日常使用で生じる細かな擦れが、鏡面部分ほど強く目立たない場合があります。

そして、使い込むことで、新品時とは違う落ち着いた表情へ変化していきます。
LEVEL7は、腕時計を傷つけずに保管するものではなく、日常で実際に使う道具として考えています。

だからこそ、新品の瞬間だけが美しい仕上げではなく、数年後、さらにその先まで使い続けられる表面であることも大切です。

傷を完全に拒むのではなく、使った時間の一部として受け入れられる仕上げ。
サテン仕上げには、実用時計にふさわしい、そんな懐の深さがあります。

ヴィンテージウォッチを修理することで見えてきたもの

LEVEL7では、自社ブランドの腕時計を作るだけでなく、1960年代から1970年代を中心とした国産ヴィンテージウォッチのオーバーホールや修理も行っています。

50年以上前に作られ、実際に使われてきた時計を分解し、直し、もう一度動かす。
その仕事を続けていると、新品の時計だけを見ていては分からないことが見えてきます。

・どの部分に傷が集まりやすいのか。
・研磨を繰り返すことで、ケースの形がどのように変わるのか。
・エッジが丸くなると、時計全体の印象がどれほど変わるのか。
・そして、半世紀を経ても魅力を失わないデザインには、どのような理由があるのか。

ヴィンテージウォッチから得た知見は、そのまま現代のLEVEL7の時計づくりへ戻されています。

ケースの面を安易に丸めないこと。
過度な研磨によって、設計された稜線を消さないこと。

仕上げを単なる装飾ではなく、長く使われるための構造の一部として考えること。
実際に、LEVEL7 LOWBEATでは、ヴィンテージウォッチのケースについて、最小限の磨きのみで、出来る限り、面を削り取らないよう仕上げています。
LEVEL7がサテン仕上げとエッジにこだわる背景には、50年以上前の時計を実際に直してきた経験があります。

サテン仕上げも「MADE BY LEVEL7」の一部

LEVEL7が大切にしているのは、単なる原産国表示としての「MADE IN JAPAN」ではありません。

誰が考え、誰が組み立て、誰が調整し、どのような状態でお客様へ届けるのか。
そして販売後、誰が修理し、長く使える状態を支えていくのか。
その一連の工程と責任を表す言葉が、「MADE BY LEVEL7」です。

ケースのサテン仕上げも、その中のひとつです。

見た目を派手にするためだけの仕上げではありません。

腕時計の形を見せるため。

鏡面とのコントラストを作るため。

道具としての性格を表現するため。

日常で使い続けることを考えるため。

そして、1970年代の実用時計から受け取ったものを、現代の時計へ戻すため。

一本の腕時計に入った細かな研磨目には、LEVEL7の時計づくりに対する考え方が表れています。

1970年代の無骨さを、現代の腕時計へ。

サテンの表情、鏡面のエッジ、そして自社工房で行う最終仕上げ。
LEVEL7が考える、長く使い続けるための機械式腕時計をご覧ください。

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