シチズン デラックスとは? ― 間接中三針を採用した国産機械式時計の転換点
国産機械式時計の転換期を象徴する一本 ― シチズン デラックス

1950年代後半、日本の腕時計産業は急速に技術力を高めていました。
戦後の復興期を経て、各メーカーは単なる実用品ではなく、より完成度の高い機械式時計を生み出そうとしていた時代です。
その中で1958年に登場したのが、
Citizen Deluxe でした。
当時のシチズンにおける上位機として位置づけられたこのモデルは、耐震装置「パラショック」など同社の主要技術を取り入れた手巻き時計で、実用性と信頼性を重視した設計が特徴です。
派手さを抑えた端正なダイヤルデザインと薄型ケースは、当時の国産時計の完成度の高さを感じさせるものとなっています。
このデラックスを語るうえで興味深いのが、ムーブメント構造です。
搭載されている機械は、いわゆる 「間接中三針」 の構造を採用しています。
センターセコンドを持つ腕時計には大きく分けて二つの方式があります。
ひとつは、輪列から直接秒針を駆動する 直接中三針。
もうひとつが、歯車を追加して中央に秒針を導く 間接中三針 です。
間接中三針は、もともと小秒針(スモールセコンド)ムーブメントをベースとした構造を活かしながらセンターセコンド化できる方式で、1950年代の腕時計では広く採用されていました。
シチズン デラックスも、こうした時代の設計思想を反映したムーブメントを持つモデルです。
そしてこのデラックスは、国産時計史の中で見ると、もう一つの意味を持っています。
それは 間接中三針の時代を象徴するモデルの一つ であるという点です。
1950年代後半になると、腕時計のムーブメント設計は次第にセンターセコンドを前提とした構造へと進化していきます。
つまり、追加歯車で秒針を中央に導く方式ではなく、輪列から直接センターセコンドを駆動する 直接中三針 の設計が主流になっていきました。
その流れを象徴するモデルのひとつが、同じ1958年に登場した
Seiko Lord Marvel です。
ロードマーベルは、センターセコンドを前提としたムーブメント設計を採用しており、後のセイコーの高級機シリーズへとつながる存在として知られています。
こうして見ると、1958年という年は、日本の腕時計が一つの世代から次の世代へと移行する時期だったとも言えるでしょう。
間接中三針の構造を持つシチズン デラックスは、1950年代の機械式時計設計の流れを色濃く残すモデル。
一方でロードマーベルのような時計は、次の世代のムーブメント設計へと進んでいく流れを示しています。
現在ヴィンテージウォッチとして見ると、デラックスは単なる古い時計ではなく、
国産腕時計の技術が大きく変わろうとしていた時代を象徴する存在 と言えるでしょう。
クラシックな外観の中に、そうした時計史の流れを感じられる点こそが、シチズン デラックスの大きな魅力なのかもしれません。
1950年代の国産時計には、今回紹介したシチズン デラックスのように、
今では見られない構造やデザインを持つモデルが数多く存在します。
LEVEL7では、こうした国産ヴィンテージウォッチを中心に、
実際に着用できるコンディションの個体を紹介しています。

